参加クリエーター決定!平成24年度 国内クリエーター制作交流プログラム

参加クリエーター決定!平成24年度 国内クリエーター制作交流プログラム

平成24年度国内クリエーター制作交流プログラム公募において、多数のご応募をいただきありがとうございました。厳正なる選考の結果、下記のとおり参加クリエーターを決定いたしました。 国内クリエーター制作交流プログラム公募にご応募いただきました皆様、誠にありがとうございました。

平成24年度国内クリエーター制作交流プログラム参加クリエーター:
通年(滞在期間:平成24年4月上旬~平成25年3月下旬)

木埜下 大祐

Jang-Chi (オル太)

二藤 建人

潘 逸舟



【審査員による講評】

一柳慧[作曲家、ピアニスト]
木埜下 大祐
サービス精神がフルートの演奏から抜け出れば迫力を増すであろう。

木幡和枝[東京芸術大学先端芸術表現科教授]
国際化が提起されて久しい日本のなかで東京は、名前ばかり突出して、個々の人間は内向化しているという懸念もあるが、たしかに一理ある。TWS青山の拠点に世界各地からやって来る若いアーティストたちを国内クリエーターが迎え、両者の接点が日常化しているという意味で、レジデンス・プログラムはこの袋小路を突破する可能性に満ちている。
東京という都市が世界の文化的文脈の中で果たす役割は何か?
 今年度の美術部門の「国内アーティスト」の選考を振り返る。

JANG-CHI(チャン チ)は1983年生まれで、多摩美術大学油画専攻卒業後は、東京とその周辺を拠点に創作と発表を行っている。というだけでなく、チャン チの近年の作品のテーマ、パラダイムは、東京という都市における情報・感覚伝搬生理であり、その解剖である。インターネット、ツイッターやPCゲームなどのネットワークで繋がる関係性と、ゲームセンター、漫画喫茶、家電量販店の前、またストリートという場所。どちらかといえば、泡沫(うたかた)のように物質性が薄く不定形な接触感が浮上してくる。
2011年の作品「つちくれの祠」は、彼のSグループのメンバーが祠を守る万物になり、櫓の中で大きなつちくれを囲み、踊り続けるインスタレーションで、大地の怒り、たゆたう怒りをおさめるというストーリーを起点にしたが、その展示中、3月11日に東日本大震災がまさに大地の怒りのように起こった。次作品、同年8月の「つちくれの精霊」は、メンバーが精霊となり会場を浮遊する作品で、会場には灯籠祠が建てられ、光と影の幻想的な世界が広がった。この2作品は土俗的な立体物や彫刻と身体の動きを一体化させ、その空間に膨大なエネルギーをこめることを意図したという。
レジデンスでは、オンラインに接続すれば、何もないスポット(A spot without anything)が映し出され、映像、写真、立体、また身体表現が立ち現われる作品を試行する。が、接続を切ればそれはどこに残るのか? 記憶には残るのか? 都会で起こっている現象をまずはそのまま受容して、今、存在している自分たちの立地点を再確認し、田舎と都市、土とコンクリート、この世界で可能なアートについて積極的に思考していくのが、彼の姿勢だ。TWS青山のレジデンスにおいても、各国からのクリエーターを巻き込み、東京を生きる市民に感作を起こしていくだろう。

二藤建人(にとう けんと)は1986年生まれで武蔵野美術大学で彫刻を学び、東京藝術大学で修士課程を修める。これまで「重力と反発」をテーマに、とくに彫刻にこだって制作してきた。最近はしかし、みずからの居心地の良い環境や心理状態、また、表現と社会との関係について、自己とのズレないしは分岐にこだわる。近作の準備過程で二藤は毎日、銭湯の掃除を行った。そこで主人の動作に触れるうちに「アクション・トレース」という手法を工夫しはじめた。
初期から彼の作品への着想は、単純な行為を作品に昇華する方法を考えることだった。アクションの決定は自身の衝動や実感を前提にしていたが、そこにさらに他者のアクションを取り入れることで特定の状況や関係性を主題に組み込めるようになり、制作に広がりが生まれてきた。アクションをトレースして静止状態にそっくり落とし込む。これまでの試みに重ねて、二藤はレジデンスにおいて、各国のクリエーターとの接触を通し、いくつかの目論見を果たそうとしている。
他者の労働、スポーツ、あるいは日常の癖などの動きを観察、撮影し、分析、練習によってアクションやポーズをいくつもトレースする。出自の異なる個々のクリエーターとの交流はお互いの異なる価値観の相克であり、相互受容である。そのなかで、日本のスタンダードに自覚的になることは創造性と社会性の肌理を細かくし、アーティストの成長には書かせない機会となろう。

藩逸舟(はん いしゅう。中国発音ではパン・イーゾウ)は造形、インスタレーション、絵画、パフォーマンス、映像と、目的に応じて異なるメディアを駆使するが、その本質はコンセプチュアル・アートだ。幼時に家族とともに日本に住みはじめ、青森の高校から東京藝術大学先端芸術表現科学部・修士課程へ進み、ここ2、3年で急速に各方面から注目を集めるようになった元気いっぱいの24歳である。その藩が2011年3.11以来、どこか暗い、物思いにふける様子を見せるようになった。東日本大震災の被災地を自転車で単独行し、青森の旧友や共同体の老人たちを訪ね、帰京して、「海の形、ふるさと」というキーワードをポツリと口にした。
日本人の対中警戒心と中国人の反日感情。それらが顕在化するたびに、そのまっただ中でゆらぐ24歳のアーティストの卵はこれまで、青森の高校生の頃から、まっさらで素直な戸惑いと仮説を作品化してきた。以下を単純に歓迎するわけにはいかないが、3.11で無数の人々が身につまされた圧倒的な自然の威力を眼前にした藩に、そこで、民族と生活という二つの故郷を生きてきた一人の若者として、アーティストとして、重大な質的な深化が起こったと言えよう。最新作「海のかたち、ふるさと」(仮題)は、「上海出身で日本育ちの中国人」というアイデンティティーを止揚して、客観存在と心象内部の存在が複雑に浸食し合う人間の芯に照準を合わせる映像作品である。
藩(パン)くんに、英文で書くアーティスト・ネームを提案するーーPan Issue。Panは汎だ。「行きわたる、全体にわたる」という意味をはらむ。いま、あなたが立ち至った揺らぎは、苦悩は、pan-issueなのだ、藩の問題であることを超え、汎問題、全体にわたる問題なのだ。

東京、青山のTWSで各国から来る若手アーティストを迎える「国内アーティスト」は、現在、この国で続々と増加しているダブル、トリプルのアイデンティティーを生きる若者たちの一人なのだ。ダブルバインド、トリプルバインドが汎問題であるという、きわめて今日的な視点からの今回のレジデンスの選考結果は、回転し続ける地球の現在と同期して行われた。それは、このレジデンス・プログラムに未来的な特色を付け加えていくことになろう。

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