第9回展覧会企画公募 審査員講評

第9回展覧会企画公募 審査員講評

2015年4月から6月にかけて募集を行いました「第9回展覧会企画公募」では、国内外から過去最多の66組の応募がありました。
厳正なる審査の結果、門馬美喜「Route 震災からの59ヶ月、エ☆ミリー吉元「バロン吉元の脈脈脈」、高川和也「ASK THE SELF」の3企画が選出されました。

<審査員講評(敬称略)>

遠藤水城   (インディペンデント・キュレーター、HAPSエグゼクティブ・ディレクター)

応募者、企画採用者およびこれから応募するであろう人の全員に知っておいてほしいことがあります。これまでにさまざまな賞や助成の審査員をしてきてつくづく思うのは、審査というのは、審査員同士にとって一つの戦いであり融和であり決裂であり矛盾でもある、ということです。


価値観の違いの明確化とそのすり合わせが行われる「審査」の場において、各審査員は「この時代に必要なアート」を懸命に表明し、それを擁護しようとし、異なる意見に耳を傾け、応募者のプランが示す内容だけでなく、その背景、ひろがり、今後の展開までも十分に考え尽くします。しかし、審査の結果は絶対的なものではなく、一つの議論の過程における暫定的な結論です。「この時代に必要なアートとはなにか」、「展覧会のあるべきすがたとは」、「公共の文化機関が担うべき役割とは」、「アーティストの社会的責任とは」、「制作と展示、参加と鑑賞をめぐるエコノミーの改変は可能か」。審査の場において、これらの問いに答えがでない以上、審査結果は最終回答ではあり得ない。

この永続的な問いという構成、答えが出なくとも問題化していく姿勢、を応募する側にも共有してほしいと思います。多くの応募プランが一つの「回答」という完結性を備えていた点を残念に思います。審査が暫定的かつ流動的であるように、応募プランも暫定的かつ流動的であるべきだし、さらに言えばある種の開放性や自由を謳歌することだって可能なはずです。「公募」とは、主催者がシステム外部の人間にシステムを変えてもらう機会を広く募っている、と考えた方が健全です。決して、主催者の権威化とその権威に頼る芸術家を増産することを目的とはしていない。そのように考えてもらえると、この公募プログラムはどんどん良くなっていくと思います。今回の企画採用者のプランの実現と今後のこのプログラムの発展を心から楽しみにしています。
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高嶺 格    (現代美術家、秋田公立美術大学准教授、國立台北藝術大学客員教授

結果的に日本人作家だけの選出となりましたが、支援金の中でやりくりしようとすると、海外からの応募者にとって旅費や滞在費が含まれる為、予算的な側面においてよりハードルが高くなってしまいます。そこは今後の課題として、クオリティの高かった海外作家にはまた別の機会に応募してもらうということで。

選ばれた3つの作品には、「いま、ここ」で展示する緊急性が高かったことが挙げられます。作家自身も変化の途上にあり、これまでとこれからの時間の変化の中で、現在を留めておく必要性を感じたもの、作家自身にその自覚のあるものが選ばれたと感じています。

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高山 明    (演出家、Port B主宰)

「芸術とは現実への応答である」とはポーランドが生んだ演出家・美術家タデウシュ・カントルの言葉である。今回の審査にあたり、この言葉を何度も思い返した。この公募が展示の企画を問うものであるからには、その展示を現実とどう接続しようとしているかが問われてしかるべきだと考えたからである。結果から見ても企画の器用さや完成度、キレイさよりも、今東京で展示される必然性のあるもの、この企画をやらねばならないのだという切実さのあるもの、自分のいる世界にしっかり向き合おうとしているものが残った。美術の展覧会という課題が先にあり、その課題にうまい答えを与えようとしている企画がかなりの数あったが、そうした企画は魅力に乏しいし、それ以上に、この時代に何かを作ったり企画したりする同時代的条件を捉え損なっているように感じた。選ばれた企画には、実現に向けたプロセスのなかで練りあげられ、様々な軋轢によってさらに磨かれていくことを期待したい。

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黒田みのり  (トーキョーワンダーサイト事業課長)

今回で9回目となる展覧会企画公募では、国内外から昨年度の倍の企画が集まった。これは、この公募が周知されたことを示す一方、応募企画のクオリティが応募数に比例したものではなったことは、この公募の趣旨と現状が変質していることを示唆するものであった。だからこそ、選考では、「今、ここですべき企画」は何であるかの問いに終始することになった。それは、選ばれることによって、優れた企画というお墨付きを得るものではなく、その世界観、或いは、世界に対する独自の視点を提示し、社会へ訴求してゆく力のあるもの、また普段、想定しないものを結びつける契機となる力を予感させるものがあったことである。その予感が展覧会で確信になることを期待する。



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