【公募】「OPEN SITE 10」 実施企画決定

あらゆる表現活動が集まるプラットフォームの構築を目指し、2016年より始まったトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の企画公募プログラム「OPEN SITE」の2025年度実施企画が決定しました。
2025年1月から2月にかけて実施した公募では570企画が集まり、書類審査と面接審査を経て展示部門4企画、パフォーマンス部門2企画、dot部門2企画を選出しました。さらにTOKAS推奨プログラムを加えた全9企画を、10月から12月まで2会期にわたり開催します。 

実施企画

展示部門

開館時間:11:00-19:00。入場無料。
各会期初日には公募審査員をゲストに迎え、オープニング・トークを実施します。

Part 1|2025年10月11日(土)~11月9日(日)
企画者 Carlos VIELMA
企画名 A mechanical wilderness
メキシコのゴーストタウンにて撮影した映像インスタレーションをとおして、移住や資本主義、そして地球における人間の存在を考察する。

企画者 丸山翔哉
企画名 Virtual Field Recording ー万物の声を聴くー
鑑賞者はゲーム空間内でオブジェクトや環境の音をフィールド・レコーディングする。ゲームを「視るもの」から「聴くもの」へと変容させ、普段は意識の外側にある無数の音に意識を向けることを試みる。

Part 2|2025年11月22日(土)~12月21日(日)
企画者 武政朋子
企画名 その容れ物は私ですか
「私」や他者のイメージが混ざり合い攪拌される中で、それを認知する心身の不確かさや、社会と依存し合う自己の身体について、写真と映像を用いて考察する。

企画者 Syaura QOTRUNADHA
企画名 Tryptich
植民地主義の影響下で形成されたインドネシアの教育や社会意識、また水や大地などの自然をモチーフに、複数の時間軸をとおして描く映像三部作。


パフォーマンス部門

会期中、特定の日時に上演します。鑑賞には事前予約と入場料が必要です。
実施日程や入場料金、予約方法等の詳細は、後日TOKASのウェブサイトおよびチラシにて発表します。

Part 1| 2025年10月13日(月・祝)~10月19日(日)※会場使用期間
企画者 藤田一樹
企画名 ソロダンスパフォーマンス暫定的に分身(仮)
長きにわたる不登校の経験から、既存の社会から孤立化し、社会との切断と接続を同時に求める矛盾した欲望をもつ身体をモチーフに、ソロダンスを上演する。

Part 1|2025年11月3日(月・祝)~11月9日(日)※会場使用期間
企画者 Mei LIU
企画名 Homesick for Another World: a film unfolding in space
明晰夢をとおしてさまざまな社会や時代、政治闘争を行き来し、過去、現在、未来が重なり合いながら、そこに地下茎のようにつながる構造を描き出す、学際的なマルチメディア・パフォーマンス。


dot部門

会期中、特定の日時に開催します。入場無料。

Part 1|2025年10月25日(土)~10月26日(日)
企画者 加藤康司
企画名 インスタント・デモ(デモの練習)
現代社会/アートにおけるデモについて、身体を使って学ぶワークショップ。カラフルなプラカードや旗、ヘルメットを身につけ、デモについて考え、対話し、デモの「練習」をする。

Part 2|2025年12月16日(火)~12月21日(日)
企画者 小林勇輝
企画名 「The Wing Chun Project(詠春拳プロジェクト)」
中国武術「詠春拳」の歴史や伝統様式、現代における戦いや自己防衛の意義について、実践的な学びをとおして再解釈した展示、ソロパフォーマンスおよびワークショップを行う。


TOKAS推奨プログラム

公募企画に加え、TOKAS企画によるプログラムを開催します。入場無料。

Part 2|2025年11月22日(土)~12月7日(日)

企画者 アダム・ルイス・ジェイコブ
企画名 Serious Heat(仮)
2022年エディンバラとの交流事業でTOKASに滞在したスコットランド拠点のアーティストによるインスタレーション。打楽器奏者のドラム演奏と都市風景の緊迫したリズムを重ねた映像に建築的要素を加え、身体に及ぼす作用を探究する。


募集概要

募集期間
2025年1月30日(木)~2月27日(木)
応募総数
570企画
審査員金子智太郎(愛知県立芸術大学美術学部准教授/日本美術サウンドアーカイヴ主宰)
小林晴夫(blanClass ディレクター)
畠中 実(キュレーター、美術・音楽批評)
近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)

審査員による総評

金子智太郎(愛知県立芸術大学美術学部准教授/日本美術サウンドアーカイヴ主宰)

選ばれた企画の実現を心より楽しみにしています。実験的な試みを助ける手厚い支援が、OPEN SITEの特徴のひとつでしょう。パンデミックから5年が経ち、共同作業や複合メディアというかたちで、何らかのつながりを表現しようとする企画がますます増えているようです。しかし、異なる要素をただ加算したような試みには、選出された企画でも、疑問を感じました。私は、異なる要素が互いを変化させ、総体として未知の結果を生むようなつながりを期待します。ひとまとまりに見えるもののなかに、異質なものどうしの相互干渉をとらえる視点がもっとあってよかった。一次・二次選考を通過したいくつかの企画には、重層的な物語やシステムの力を借りて、このようなつながりを作ろうとする表現が目立ちました。今回は応募が比較的少なめだったリサーチプロジェクトの発表やワークショップにも、相互的な働きかけを探求する大きな可能性があると思います。


小林晴夫(blanClassディレクター)

OPEN SITEの審査は今年で6回目、今年は応募者数が激増、特に海外からの応募が多かったというのは、現状の為替やインバウンドの状況を反映しているのか…。この6年で国内、海外を問わず、色々な事柄が驚くほどに移り変わっている。そうした社会の変化なども踏まえつつ、今年も、どちらかといえば作品の形よりも内容に重きを置いて、それぞれのアーティスト個人が、どんなことに対峙し、どのような表現をしようとしているかに注目したつもり。一方で、TOKAS本郷だからこそ成立する表現や試みなのか? あるいはこの場所の特殊性を十分活かせる企画なのか? 場合によっては「日本」や「東京」に置き換えられるかもしれないが、あらためてOPEN SITEで発表する意義を考えてしまった。結果的に選ばれた7組はそれぞれがまったく違うタイプの企画ではあるものの、作品自体が思考実験に近いパフォーマティブな表現が残ったように思う。


畠中 実 (キュレーター、美術・音楽批評

新しい枠組みになって10回目を迎えたOPEN SITE 10は、新型コロナウイルス感染拡大防止の規制緩和にともなって応募数がさらに増加して、前年度から倍増以上になったという。今年度はさらに国外からの応募が一層増加する結果となった。コンペティションとしては、注目を集める企画であるという評価もできるし、倍率が上がることでのいろいろな影響もあることだろう。とはいえ、採択企画数は変わらずなので、なかなかにきびしい基準を、審査する側も持たねばならないし、公募企画としての評価に見合った展示の結果も求められる。結果はそれが新作であればなおのこと、未知の部分をどう評価するかにかかわってくる。ともあれ、展示について、テーマや手法やジャンルの多様性を考慮しつつ審査した結果、(あたりまえだが)どれもがちがうスタイルを持ったアーティストが選出されたと思う。今回の審査をへて、たとえば、毎年異なるテーマを設定する、などを今後の課題として考えさせられた(あくまでも個人の感想です)。


近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペース プログラムディレクター)

今回の企画公募審査では次の三つの点について考えさせられました。一つは、企画にとっての実験的な取り組みや試行の提案が、実施段階ではきちんと結実し、次につながる可能性があるかどうかということです。切り貼りの実験性や新しさではなく、個別のアイデアが企画全体に馴染み、こなれた作品となるか否かをはかるには、継続的な実践が説得力となり、制作過程での思考の深化と明晰さ、そして提案された企画に対する動機の強さが評価に影響しました。二つめは今、ここで実施することの時機に関してであり、企画の実現にあたり機が熟しているかどうか、ここで実施する意義が高いかどうかということです。三つめは、企画の実現により、企画者と鑑賞者にどのような出会いが期待できるか、という点を考慮しました。発表者視点のみならず、鑑賞者が受け取ることでどのような反応が起り得るのかという、作品と鑑賞者の双方向的な関係性にも注目しています。

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