坂東祐大、文月悠光「声の現場」

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坂東祐大、文月悠光「声の現場」

OPEN SITE 6|TOKAS推奨プログラム


会期
2021年12月24日(金) - 2022年1月16日(日)
休館日
12/27~1/3、1/11
時間
11:00-19:00
入場料
無料
会場
トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースC (3F)

言葉と声、物語と唄、語り手と文体――テキストが持つさまざまな特性を生かした、詩人と作曲家によるサウンド・インスタレーション。誰かの日常や断片的な記憶は、きわめて個人的な「声」であると同時に、普遍的な響きを提示する。個々の語り手は、異なる時間・状況に置かれながらも、奇妙な重なり、不思議な共鳴を見せる。この災禍の時代を、詩と音楽によって鮮やかに記録する。  

Text:文月悠光
Sound Editing:坂東祐大
朗読: #1中村みちる #2牧村朝子 #3文月悠光 #4細川唯 #5華恵 #6涼櫻
音響施工:後藤天
Special thanks:中川ヒデ鷹
バナーデザイン:今垣知沙子  


撮影:髙橋健治

撮影:髙橋健治

撮影:髙橋健治

撮影:髙橋健治

展覧会に寄せて

文月悠光

今回の企画に際し、坂東祐大さんに日記を元にしたテキストを読んでもらったとき、なぜ日記にニュース記事を併記しているのかと不思議がられた。とりとめのない個人の記録は、大きな出来事と並列させることで、他者と体験を共有しやすくなる。そう直感し、目に留まったニュース記事を日記に引用していたのだ。出来事が忘れ去られる前に、それぞれの記憶の位置を確かめておきたかった。 感染拡大の危機を「パラレルワールドのようなもの」と形容されたとき、では自分が生きるこの世界は何なのか、自分の存在も含めて誰かにとっての「並行世界」とされたことに大きなショックを受けた。だが、想像も膨らむ。私たちは虚実の狭間を生きているのだ。もし日本にいなかったら? もし2020年代にコロナ禍が到来しなかったら? そんなパラレルワールドを、作品の中で自由にしぶとく描き切ってみてはどうか。それは遠くにいる誰かと繋がる行為かもしれない。


展示にあたり、私以外の5名にもテキストの朗読をお願いした。知人もいれば、初対面の方も。作者個人の心情や制作背景を知らない他者が読み上げると、言葉は生き生きと躍動し、新鮮味を帯びた。日記という他ならぬ私の声でありながら、私の声ではない5名の声から、テキストに思わぬ表情が付与された。さらに坂東さんの手により、音楽の側面から、表現の可能性を大きく切りひらいていただいた。 言葉もコロナの影響は免れない。「距離」「宣言」「行列」「配布」「接触」など、一部の言葉の印象が大きく変容した。2011年の東日本大震災及び原発事故直後、「波」「光」「雨」などの語彙の手触りが一変したように。それは、私たちが災禍の時代を生き延びてきた証でもある。 この「声の現場」を歩きながら、あなたの生き延びた証を見つけていただけたら嬉しい。

プロフィール

坂東祐大
1991年生まれ。作曲家、音楽家。多様なスタイルを横断し、刺激や知覚の可能性などをテーマに、幅広い創作活動を行う。
https://www.yutabandoh.com/

文月悠光
1991年生まれ。詩人。中原中也賞受賞。詩集、エッセイ集の刊行ほか、詩の展示、朗読、作詞など多方面で活動している。
http://fuzukiyumi.com/

参加クリエーター

坂東祐大、文月悠光

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