鷹羽弘晃

レジデンス・プログラム

二国間交流事業プログラム(派遣)


鷹羽弘晃

参加プログラム    二国間交流事業プログラム(派遣)
活動拠点日本
滞在都市フィンランド
滞在期間 
2010年6月 - 2010年7月
滞在目的

Time of Music音楽祭にて、自作のプレゼンテーションを行う。 Avanti! Summer SoundsとTime of Musicの2つの音楽祭を中心に、フィンランドの音楽シーンについて調査し、そこに集う音楽家と交流を深める。

滞在中の活動

Avanti! Summer Sounds におけるプレゼンテーション
Time of Music におけるプレゼンテーション
2010年度 二国間交流事業(フィンランド)派遣

音楽祭に参加し、演奏を鑑賞する。
フィンランドの音楽文化活動を体験する。
作曲を行う。

滞在制作成果
Avanti! Summer Sounds(6月30日~7月4日)とTime of Music(7月6日~11日)、2つの音楽祭の公演をほぼ全て鑑賞し、後者ではレッスンにも参加、様々な活動を通してフィンランドの音楽の製作環境を存分に体感することが出来た。また両音楽祭で、自作のプレゼンテーションを行い、主にフィンランドの若手作曲家と意見交換を行った。

所感
Avanti! Summer Soundsのコンサートプログラムは、古典と古典の間に現代曲があるという形で構成されており、聴衆も一般市民層が多く、とても温かい雰囲気のフェスティバルであった。今回のゲスト作曲家、一柳慧氏はピアニストとしても連日登場、音楽祭ならではの熱気に会場は包まれていた。Avanti!メンバーの演奏は素晴らしく、特に室内楽では、世界トップクラスの演奏者が揃い見事だった。企画の中でも印象的だったのは、こどもの為のコンサートだった。Workshopに参加した若手の作曲した曲が、次々と演奏された。3歳~小学生が中心の聴衆に対し、調性がなく、雑音とも思えるような音が多用されている実験的な現代音楽を聴かせるのはどうなるのかと心配したが、語り手が登場し、動きを交えながら曲間を繋ぐと、子供たちは大喜びだった。作曲家もWorkshopを通じて色々な新しい奏法を試したりと、両者ともに満足する現代音楽を上手に使ったファミリー・コンサートであった。
 一方、Time of Musicは現代音楽一色。ゲスト作曲家でマスタークラス講師のMarco Stroppa氏の作品の他、フィンランドの若手作曲家を中心にたくさんの初演があった。驚いたのは、その上演環境だ。今回のテーマのひとつが「エレクトロニクス」だったとは言え、初日のMIDIピアノにはじまり、連日、たくさんの電子音響用のスピーカーで作られた、空間音響システムが設置されるなど、どの作曲家にも要求通りの設備が用意されていた。また、教会や体育館には照明機材を持ち込み、スタンドを立てるなど、照明を使った演出の希望にも対応できるようにしていた。更に、フィンランドの作曲家の初演には、FIMICが製本したスコアが使われていて、初演の前に既に作品管理が万全であるという状況が分かった。このような充実した創作環境が彼らを支えるのだろう。フィンランドの若手作曲家は、それぞれ個々の作風の中で、溢れるイメージを120%曲の中に書き切っているという印象を持った。
 期間後半には、ドイツとアイルランドを中心に活動する若手演奏家5人からなるEnsemble Adapterがマスタークラスのレッスンで完成したばかりの作品を実演し、作曲家と意見交換をしながら曲を仕上げて行くというWorkshopが行われた。聴衆も舞台に上がり全員で譜面見ながら試演を聴くという企画はとても、彼らの初見の現場を完全公開する姿勢と、作曲家に協力的な態度に大変良い印象を持った。彼らは70年代日本で結成されたサウンド・スペース・アークと同じ編成ということもあって、日本に興味を持っており、意気投合した。
  J.Hartikainen氏(作曲家)の現代音楽講座も興味深かった。今回がこの音楽祭参加7回目という受講生の同氏が、一般の聴衆を相手に、毎朝1時間、現代音楽のわかりやすいレクチャーをするという内容で、熱心に毎日参加するお客さんも多く、好評だった。連日続く最先端のコンサートの一方で、一般向けの教育的プログラムも用意されているという音楽祭の仕組みに感心した。
 決して、大人数が集まる音楽祭ではない。それでも、ゲスト作曲家Stroppa氏をはじめ世界的な音楽家たちが集結し、音楽監督Perttu Haapanen氏(作曲家)自ら、StockhausenのMicrophonieの演奏に加わるなど、運営側もやりたいことを思いっきり表現している。その情熱が、そこに集う音楽家と聴衆に伝わり、盛り上がるのだろう。そんな小さな町の音楽祭の醍醐味を存分に感じた。

滞在記録メモ
6月30日、ヘルシンキ到着。
7月1日〜4日、フィンランド作曲家協会(Society of Finnish Composers)のゲストルームに滞在し、ポルヴォーで開催されたAvanti! Summer Sounds音楽祭に参加。
7月5日、FIMIC(Finnish Music Information Centre)を一柳慧氏と共に見学。
7月6日〜11日、ヴィータサーリに移動。Time of Music音楽祭に参加。
7月11日〜15日、ヘルシンキに戻り、シベリウス・アカデミーやシベリウスハウスのゆかりの地を訪問。

交流事業成果
1. Avanti! Summer Soundsでのプレゼンテーション
 7月2日、16時より1時間、若い作曲家8名を対象に自作のプレゼンテーションを行った。彼らはAvanti!の団員と共に数日間滞在し、SalonenやLindbergといったフィンランドを代表する作曲家のレッスンの受講し、Avanti!Festivalでの1人5分程の作品を発表するいうWorkshopの最中で、どの作曲家もハイレベルであった。私が訪ねた日は作曲家Jukka Tiensuu氏が講師として来ていて、私のプレゼンテーションも聞いて下さった。場所はAvanti!の団員が泊まっている宿舎にあるレッスン室。資料の用意など、急な申し出にも関わらず助けて下さった音楽監督のSeppo Kimanen氏と、Workshopの担当のTomi Raisanen氏(作曲家)に心より感謝している。
 プレゼンテーションは「日本の伝統と自作の関係」というテーマで行い、簡単な解説を交えながら自作を3曲紹介した。聴衆の興味は和楽器を使った作品に集中。「邦楽演奏家は五線紙で書いた譜面を読めるのか」、「西洋の作曲家が邦楽器を使った作品のレパートリーはあるのか」などの質問があり、五線紙に書かれた和楽器の楽譜を熱心に見ていた。最後に私が指揮をしている西洋楽器と古楽器の混合アンサンブルEnsemble Muromachiの紹介をすると、皆とても興味を持ってくれた。いつか実際に、生の演奏を聴いてほしい。

2. Time of Musicでのプレゼンテーション
 7月11日、12時より1時間、フェスティバル事務所のある高校の教室でプレゼンテーションを行った。聴衆は一般客の15名弱と関係者数名、その中には同音楽祭で初演のあった作曲家 S.Haapamaki氏やG.S.Gunnarsson氏も同席。多忙の中、音楽監督P.Haapanen氏がフィンランド語通訳をして下さった。
 一般客も多いということで、モニターに楽譜の一部や解説図を映しながら、4作品を紹介した。作曲家は西洋楽器の曲にも関心を持ったが、やはり多くの聴衆は和楽器に興味があるようであった。

所 感
 2つの音楽祭の音楽監督と話が出来たこと、また特に同年代のフィンランドの作曲家と交流できたことがとても貴重であった。フィンランドはEUに属しているものの、多くの音楽学生は、やはりドイツ、フランスといったヨーロッパの中心に留学をする。しかし、彼らと話していく中で、その中心で起こっている最新のモードをよく勉強し、意識しながらも、それと距離を置きながら自分なりの語法を探すという作曲家が多いように感じた。そんなメンタリティーは、我々日本の作曲家も共感できる部分が多いのではないかと思う。
 フィンランドの音楽事情を実際に見て、音楽家に対する支援がハード、ソフトの両面から、しっかりなされているということを実感した。これは、芸術家のみでなく、それを支える業種の人にも是非、体感して欲しいと思った。フィンランドに学ぶべき点がまだまだたくさんあると思う。
 プレゼンテーションでは、和楽器に興味が集まったことに改めて驚いた。彼らにとって和楽器は、未知なる楽器への好奇心の他に、現代音楽で今や主流となった「ノイズ」を元来含む楽器への憧れがあるのだと思う。私が指揮を担当する「アンサンブル室町」を紹介したので、彼らからの要求にいつでも答えられるよう、活動を続けて行こうと思っている。
 Ensemble Adapeterはじめ同年代の演奏家に出会ったことも良かった。彼らのポジティブな姿勢は励みになった、今後も彼らと連絡を取り合い交流して行きたいと思っている。

クリエーター情報

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