更新日:2024.12.27
参加プログラム | 海外クリエーター招聘プログラム(個別プロジェクト) |
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活動拠点 | ブエノスアイレス |
滞在都市/滞在先 | 東京 |
滞在期間 | 2025年1月 - 2025年3月 |
活動弁士による上演時の話芸に焦点を当てた映画や情動、記憶についてのリサーチを続ける。
抽象的な映像、曖昧な場面、フィルム内の欠損といった様々な素材に対して活動弁士の語りがどのように反応し作品に働きかけるかを探っていく。活動弁士の即興的な側面を取り入れることで、演者自身の記憶や想像力がこうした規格から外れた映画にインスピレーションを与えるだろう。
滞在中の活動写真弁士の歴史や技法についてより深く知るため、活動弁士による映画上映会に出席し、活動弁士や無声映画の専門家にインタビューをした。国立映画アーカイブのコレクションや、京都にあるおもちゃの映画ミュージアムを調査し、そこで珍しいフィルムフォーマットについて学んだ。また、かつての銭湯で、現在は活動弁士付きの無声映画上映会の会場となっている「カツベンのゆ」を訪れた他、無声映画のロケ地への訪問や、月間「浅草」への執筆を行い、活弁の学校にも参加した。
その結果、名弁士として知られる片岡一郎氏とのコラボレーションによる新作映像インスタレーション《The voice of centaur》(ケンタウロスの声)が完成した。この映画は、アルゼンチンの無声映画を現代風に解釈した弁士のパフォーマンスを取り上げたものである。
また、時代劇に弁士によるナレーションを加えたビデオインスタレーションや、映画ポスター、チャンバラ映画を題材にしたコラージュ制作も行った。
《The voice of the centaur》2025年、映像インスタレーション、13分、Still
《The voice of the centaur》2025年、映像インスタレーション、13分、Still
アラスは、無声映画時代に日本で流行したパフォーマンスの一種である弁士の美学を探求し、日本の無声映画コミュニティに迎え入れてくれた弁士やこの分野の専門家にインタビューをすることで、その歴史と技法を学んだ。
レジデンス期間中に、過去と現在のコラボレーションとして弁士による実験を試みた。その結果、コラージュからビデオまで一連の新作を生み出すことができた。
このプロジェクトのメインは、著名な弁士である片岡一郎氏とのコラボレーションによる新しい映像インスタレーションである。この作品は、複数の翻訳の過程をとおして著作(authership)の限界を広げている。
将来的には、弁士たちとのコラボレーションを続けながら、日本とアルゼンチンで上映会や展覧会を開きたいと考えている。
また、最近の弁士史上最大のイベントでもある無声映画鑑賞会800回記念特別公演「百花繚乱大活動写真大会」に出席した。
亀戸文化センターで行われた1日限りのプログラムでは、15人の楽士と日本で活躍している現役の20人の弁士のパフォーマンスによる22本の映画が上映された。
また、おもちゃ映画ミュージアムを非公開に訪問する機会にも恵まれ、そこで貴重な初期のフィルムフォーマットを目の当たりにし、ミュージアムのディレクター達とも親しくなった。彼らは後にはるばる京都からTOKASのオープンスタジオに来てくれた。
《The voice of the centaur》2025年、映像インスタレーション、13分
《Chanbara benshi》2025年、インスタレーション、13分
《Final cut》2025年、コラージュ、15x25 cm