小林勇輝「詠春拳プロジェクト」

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小林勇輝「詠春拳プロジェクト」

OPEN SITE 10|公募プログラム【dot部門】

「詠春拳プロジェクト」(2019年〜)は、少林寺の僧侶・拳法家であった「五枚」という女性によって創始された中国南部の武術「詠春拳」を起点にした学際的なパフォーマンス・プロジェクトである。本プロジェクトをとおして、詠春拳創始者の思想を再解釈し、その発展と密接に関係する東アジアにおける戦争と植民地支配の歴史、そして現代社会における戦いや、自己防衛を学ぶことの意味を、パフォーマンス・アーティストとして模索する。

会期
2025年12月16日(火) - 12月21日(日)
時間
11:00-19:00
入場料
無料
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースC (3F) 
協力アーツコミッション・ヨコハマ、MPP Totsuka、大洋建設株式会社、株式会社大橋、株式会社銘林、株式会社カネジュウ

タイムテーブル

ワークショップおよびパフォーマンスの時間外は、滞在型プロジェクトとしてアーティストが常駐しています。

ワークショップ
日時2025年12月16日(火)・17日(水)・18日(木)17:00-18:30
料金無料
- 予約制
- 9月12日(金)14:00より予約開始
- 各回とも定員になり次第、または前日17時までに予約受付を終了します。
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースC(3F)

https://os10-kobayashi.peatix.com/view
9月12日(金)14:00より予約開始(外部サイトに遷移します)
※Peatixのアカウント登録とログインが必要です。

パフォーマンス
日時2025年12月19日(金)17:30-18:30
2025年12月20日(土)14:30-15:30 ★アフタートーク 15:40-16:30
2025年12月21日(日)14:30-15:30
出演小林勇輝
料金 無料
- 予約制、自由席
- 9月12日(金)14:00より予約開始
- 各回とも定員になり次第、または前日17時までに予約受付を終了します。
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースC(3F)

https://os10-kobayashi.peatix.com/view
9/12(金)14:00より予約開始(外部サイトに遷移します)
※Peatixのアカウント登録とログインが必要です。

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ウォーターミル・センターでのパフォーマンスの記録 2024

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ウォーターミル・センターでのパフォーマンスの記録 2024

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《Chromosome》2018

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《Battlecry》2022

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プロフィール

現代美術家、パフォーマンス・アーティスト。自身の身体を中性的な立体物として用い、性や人種的な固定概念に問いかけ束縛や流動性を表現。また自由と平等の不確かな世界の制限的な社会的コードを疑い人間の存在意義を探る学際的パフォーマンス作品を発表。主な活動に「ウォーターミル・センター 2024 アーティスト・イン・レジデンス」(ニューヨーク)、「www. 反轉資料庫.commons」(台北市立美術館、2024)など、「CHAT 5th Anniversary - Factory of Tomorrow」 (香港、2024) 。2025 年度アーツコミッション・ヨコハマ (ACY) アーティスト・フェロー。

http://yukikoba.com/

レビュー

それは受け入れるかもしれないし、退けるかも知れない

小林晴夫(OPEN SITE 10 審査員)

 小林勇輝はジェンダーレスでノンヒューマンなストロベリーになったり、プロスポーツやオリンピック競技のユニフォームを着用して倒れるまでトレーニングをしたり、もっとシンプルに自身の身体にストレスを加えて、その身体を文字通り曝け出し、そこに起こり得る社会的な抑圧を再確認しつつ、身体の変容可能性をパフォーマティブに示唆してきた。
 今回の「詠春拳プロジェクト」は、展示やパフォーマンスで完結する作品ではなく、日々の練習やワークショップ、リサーチとレクチャーなど現段階でのプロジェクトの全貌が移植された。なかでも私が期待したのは、TOKASの一室が道場になって、通常は裏側にある日々の練習が、作品と地続きに示されることだった。
 始まる前には、部屋にはさながら静謐な時間が流れ、ひとり黙々と練習する小林の姿を思い浮かべたが、私も参加したワークショップは、独特な立ち方といくつかの手形を覚えると、すぐに二人一組になり、お互いの腕を接し続ける「黐手(ちいさお)」という手合わせが中心だった。「詠春拳」は、この「黐手」を繰り返し鍛錬することが基本、孤独どころか、相手の呼吸まで自分の一部にしてしまうところが面白い。ワークショップの最後に目を瞑って「黐手」に挑んだのだが、目で見るより、自分の動きも相手の動きもよく見えるような不思議な感覚を味わった。
 小林の身体には幼い頃から積み上げたアスリートとしての経験が深く刻まれている。高校時代にはテニスの強化選手に選ばれるほどの実力者。大学進学後、アートを学びながらテニスの練習に打ち込むという二重生活を経て、アートに専念するようになる。
 ひとつの目的に修練されたスポーティブな身体に強いられるのは、単に肉体的な負荷だけではないようで、競争優位の男性中心主義的な構造、時々の政治やコマーシャリズムからの要求、偏見に満ちた猥雑で大衆的な視線…、アスリートの個別で孤独な身体は不当に晒されている。小林がアスリートとして身をもって感じた束縛は、アートを学び表現をする自由な身体を獲得すると、逆説的に作品コンセプトの中心的な位置を占めるようになる。
 その延長線上にあるはずの「詠春拳プロジェクト」、長袍(ちゃんぱお)姿などを見るとこれまでの作品と似た雰囲気もあるが、本気で身を投じている感じは決定的に違って見える。そのあたりのことを本人に聞いたところ、このプロジェクトを通して、これまで点でしかなかったことが包括的に見渡せるようになったと話してくれた。ではなぜ「詠春拳」だったのだろう。
 総じて男性的なイメージが強い武術にあって、「詠春拳」は300年以上前に女性によって創始され、旧来のカンフーよりもより日常に根ざした実践的な守りの武術。その矛盾のようなところに、自身の作品とのクィアー的な共通点を直感したのだろうか。
 「詠春拳プロジェクト」の経緯は、2019年に京都詠春拳洪拳練習会の田中雅也師傅の元で鍛錬を開始。その後、アートプロジェクトとして各種の助成制度を活用しながら、香港や中国本土の道場に赴き、直接技術を習得、すでにインストラクター資格も取得している。また同時にゆかりの土地を巡って「詠春拳」の歴史的な変遷を辿る旅でもある。旅の途中では「詠春拳」の数奇の歴史が少しずつ浮かび上がってくる。国共内戦や日中戦争などの社会の変動にも影響され、逆にそのことで各地に広がっていく様子、多くの流派に分派しながら、さまざまな要因が加味され、解釈やその形にまで変化が見て取れる。想像以上に雑多な要素が複雑に絡み合い、実践的な戦いの技術から、現在進行形でその役割を変容させてきた。
 あるいは、小林はこの複雑な社会に揉まれながらも長い時間を生き抜いてきた「詠春拳」という「ひとつの技術」に同調し、これまで作品で扱ってきた自身の「ひとつの身体」と重ね合わせ、身につけることで、アートに宿命づけられる虚偽性からも、スポーツが担う目的からも離れ、より実践的な対話の手法としての可能性を見出そうとしているのかもしれない。
 もしかすると、これまで概念化を繰り返し、切り刻むようにバラバラに作品化された身体をひとつながりに戻し、日々の生活も含めた時間も事柄も全部があらかじめ繋がっているものとして生き直すことが目的なのではないだろうか。
 会場には木人椿(もくじんとう)、八斬刀(はちざんとう)、六點半棍(ろくてんはんこん)で用いる長棍などの武器具が展示されている。この中で行われたレクチャーパフォーマンスは、プロジェクトの経緯を追いながら、「詠春拳」の基本型に始まり、多様な流派の中から蛇や鶴の象形を模した形や動きなども取り入れ、展示されている武器具を用いた演技も順番に実演された。
 演技に熱が入ってくると、その迫力や打ち立てる武器の音に、こちらの緊張も増していく、木人椿の腕にあたる「枝」や長棍が、海で拾った流木などで自作した棒に差し替えられ、おが屑を入れた布袋が壁に押し当てられ連打され、会場に木の香が舞う頃、これまでの型通りの実演から、小林本来のパフォーマンスへとシフトしていることに気付く。直線的で攻撃的な武器の強度を削ぐため、時間をかけて磨きあげられた有機的な形の棒は、素直な器械のようには扱えない。時に生きた蛇のように見えたり、男性の性器に見えたり、得体の知れない自傷的で性的な行為も伴って、その場の空気を歪めるように変形させていった。
 パフォーマーが没入すると、それまでずっとあった寛容が一変、突き放されたような疎外感を感じてしまったのだが、そのアンビバレンツこそが小林の作品にあるカタルシスの本質であり、このプロジェクトの出発点でもある。


小林晴夫
blanClassディレクター、アーティスト。1968年神奈川県生まれ。2001年~2004年Bゼミ所長。2009年blanClassを創立し、芸術を発信する場としてライブイベントを多数実施。現在はアーカイブ運営と出張企画等を中心に活動を展開している。


参加クリエーター

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