ユハ・コスキネン

レジデンス・プログラム

芸術文化・国際機関推薦プログラム

更新日:2019.11.27


ユハ・コスキネン
参加プログラム    芸術文化・国際機関推薦プログラム
活動拠点フィンランド
滞在期間 
2010年6月 - 2010年7月

滞在目的

TWSのレジデンスに滞在する主たる目的は、日本のミュージシャンとコラボレートして《Basho Fragments》という作品群を展開させることにある。東京の物質世界や精神世界を体験できる様々な場所を探ね、巨大なメトロポリスでの生活のなかに存在する多種多様な時間の積み重ねを感じたい。

滞在中の活動

OPEN STUDIO 2010
アンサンブル・ノマド「 フィンランディア2010」
(東京オペラシティ リサイタルホール)


TWSに滞在しているほかの分野のアーティストのなかから、私のプロジェクトに新しい視点を与えてくれる人を見つけたい。また、和歌に引証される有名な地名(歌枕)の概念のように、東京の都市風景のなかに私の作曲プロセスと符合する個人的な訪問地のリストを作りたい。


滞在成果
東京の中心に長期間滞在できたことは、この巨大な首都の日常を知る絶好の機会であった。TWSのレジデンス滞在は、日本文化への私の興味をさらに深める可能性を示唆してくれた。能や義太夫を鑑賞でき、作曲界の重鎮である一柳慧氏や湯浅譲二氏と話すことができ、多くの異国から訪れた若いアーティストたちに出会うことができた。TWS滞在の間に私は、三島由紀夫の戯曲『サド公爵夫人』を基にしたチェンバー・オペラ曲《サド公爵夫人》の総譜を完成させた。東京はそれを仕上げるのに最適であったと共に、この楽曲によって将来の道が開けた。私は奮起して三島の戯曲の原著を買い、いくつかのくだりを日本語で読み始めた。フィンランド語訳で既によく読み知っていたはずの文章を漢字とひらがなで見たときに、日本と西洋の思想の本質的な違いを新たに直感した。時間の空白の概念(「間」)は、日本文化のあちらこちらに今も見られ、スピーチや文章にも存在している。このことについては、長い興味深いディスカッションを幾たびもTWSに滞在していた作曲家の森下周子と交わした。私の三島の戯曲についての解釈は、それが西洋の言語としか結びついていないという理由から、完全に西洋化されたものであることも理解した。

交流成果
「オープン・スタジオ」において、私はTWSに滞在していた亀井佑子とコラボレートした。我々のプロジェクト名は「Ambra(イタリア語で「琥珀」の意)」で、出発点は三島由紀夫の戯曲『サド侯爵夫人』であった。第三幕で、主人公のルネが琥珀に閉じ込められた虫(琥珀の虫)にまつわる思い出を語る。佑子とともに、琥珀とはどのような材質のものなのか、その特別な色や質感を想像しようとした。化石化した虫は何千年も、海中の琥珀のなかで眠っている。このことは情熱的な最後の時期を迎えるまでの長い年月を地中で過ごす日本の蝉と共通点があるように思えた。パフォーマンスに使用したエレクトロニックサウンドに、私は松尾芭蕉の有名な句、「蝉の声(閑さや岩にしみ入る蝉の声)」を用いた。佑子は、「琥珀のような」振り付けをし、自らも踊った。我々はパフォーマンスにおける時間の空白の制約に特に注意を払った。佑子の動きは、観衆の前の抑制されたスペースを表現し、彼女は音が既に消えてもしばらく動きを続けていた。

クリエーター情報

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