更新日:2024.4.4
参加プログラム | 芸術文化・国際機関推薦プログラム |
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活動拠点 | メキシコシティ |
滞在都市 | 東京 |
滞在期間 | 2024年1月 - 2月 |
TOKASレジデンシーでは前回、岡本太郎が1967年にメキシコシティで名作壁画《明日の神話》を描いた時期についてリサーチした。岡本氏は、パリのソルボンヌ大学で民族学を専攻していた頃から、古代の先住民族の文化に憧れを抱いていた。作品には日本の縄文文化の影響が見られるが、メキシコのアステカ文明やオセアニア先住民族の文化にも深い憧れを抱いていたという。
自身のリサーチは、彼が所蔵し、青山の自宅記念館の居間に常設展示されているメキシコの粘土製民俗彫刻「生命の樹」をもとに、1970年に大阪の《太陽の塔》の内部に設置された彼のモニュメント彫刻《生命の樹》との関係性や類似点を見出すことを目的とした。
これら全てのリサーチを踏まえ、メキシコの文化に触れたことが、最終的に彼の芸術にどのような影響を与えたかを伝える映画を今回制作する。
大阪、川崎、東京の3都市で、《The Two Trees》と題した次回作のための映像の第一弾を撮影した。この最初の試みは、岡本太郎の記念碑的作品(大阪の《太陽の塔》、東京の《明日の神話》、川崎の《母の塔》)から最初のイメージをつかむことを意図していたが、同時にメキシコの雑誌のために、現在のグローバルな文脈の中でこれらの日本の都市を構成する「岡本太郎ルート」と私が呼んでいるものについて、記録写真記事を作ることも意図していた。
例えば、《太陽の塔》が1970年の大阪万博で岡本太郎に委嘱されたものであることを考えると、この日本のモダニズムの巨匠の遺産が、万博から55年後の2025年に同じ大阪で開催される新たな万博の開幕1年前にまだ現存していることも非常に興味深い。
これから手掛ける映像作品は、岡本太郎が作品だけでなく、理論的な2つのテキストー1つ目はスペイン人到来前に存在したアステカ文化に対する彼の評価を通して、そして現代についてはモダニズムのメキシコ壁画家に対する彼の賞賛を通して―においてもメキシコ文化と深い関係を築いたことを探索するものである。このため、撮影の際、彼の作品にメキシコからの影響が見られることに特に重点を置いた。《明日の神話》の場合、メキシコ人アーティスト、ダビッド・アルファロ・シケイロスの影響が、岡本の代表作の色使いにどのような役割を果たしているかは非常に明白である。しかし、彼の壁画の中心にある骸骨の姿を見れば、メキシコの「死者」の伝統的、歴史的、象徴的な役割も容易に認識できる。私は学者、研究者、専門家たちとのさまざまなインタビューを撮影するために、今年の6月にまた来日するつもりである。
岡本太郎の《太陽の塔》の器官として構想された《生命の樹》は、1970年の万博閉幕後、一般公開されなくなった。何十年もの間、内部の巨大な彫刻は劣化の一途をたどっていたが、2016年に大規模な修復プロジェクトが始まった。2019年3月、《生命の樹》は再び命を吹き込まれ、約50年ぶりに人々はこの魅力的な彫刻を鑑賞することができた。《生命の樹》を賞賛するならば、控えめに言って、5つの様々な昇天の物語の中を通っていく深いトランス状態を体験することである。この驚くべき傑作を見ることができたのは、間違いなく私の滞在中で最も印象的なエピソードだった。