更新日:2025.9.11
| 参加プログラム | 二都市間交流事業プログラム(招聘) |
|---|---|
| 活動拠点 | バーゼル |
| 滞在都市/滞在先 | 東京 |
| 滞在期間 | 2025年1月 - 2025年3月 |
悲しむことの儀礼と手法に関するこれまでの自身のリサーチを引き続き行うつもりである。伝統的な悲しみ方とデジタルな悲しみ方が異文化間でどのように異なったり似通ったりしているか、また実在の人物と架空のキャラクターがそれぞれ亡くなった際に悲しみ方がどのように変化するか、について関心を持っている。架空のキャラクターに対して悲しむ人々は「ファン」であるが、日本には自身も関わりを持ちたいと願うとりわけ豊かで独自の「ファン」文化がある。「ファン」の世界と悲しむことはいずれもジェンダー的な振る舞いと結びついており、それゆえ日本のジェンダー表現は―伝統的なものから、現在広く好まれているもの、クィアなものまで―自身の探求したい分野である。
東京に滞在中、私はメイド喫茶を訪れ、メイド喫茶について考えた。2.5次元の架空のメイド・キャラクターと客が交流するこのような空間で、ジェンダーや愛情関係が生き生きと描かれることに興味を持ったのだ。ジェンダーのパフォーマンスや社会的なあり方が、どこで規範から外れるのかを観察しようとした。 だいたい週に2日は銀細工の工房に通い、打ち出しの技法を習った。 日本の伝統的な銀細工で、一枚の平らな金属板から立体的な形を打ち出す。私は2つの銀のたまごっちを制作し、日本版と海外版の初代デススクリーンをつけた。

2025年、滞在中にさまざまなメイド喫茶で撮影したチェキ

銀細工の様子
写真:Izumi Ken

銀細工の様子

銀細工の様子
滞在中、技術的にも理論的にも多くのことを学んだと感じている。銀細工の工房に定期的に通い、具体的な制作を着実に続けることができたのはとてもよかった。ただ銀細工の作品を制作しただけではなく、制作方法も学ぶことができた為、帰国後もアトリエでそのテクニックを活用している。
銀細工の先生や先生のお姉さん、そして他の生徒たちとの関係は、言葉が壁になることもあったが、深いものになった。年齢の違う友人を作ることは大切だと感じ、私が出会ったさまざまなアーティストたちが、東京のアートシーンの中でどのように活動しているのか、どのようにアートのための空間を作っているのか、どのように人々がひとつの目的のために集まっているのかに、私の心は突き動かされた。今後数年間、このような友情を育み、また東京、日本に戻りたいと思う。
滞在中はリサーチや学習に集中したかったので、 オープン・スタジオで発表したビデオ作品の完成には至らなかったが、少なくとも今後1年間は滞在中に得られたことについて取り組むつもりだ。また、これまで自身が映像作品において演じてきたキャラクターたちとともに、スクリーンという快適な空間から離れ、現実空間で観客との相互作用を可能にするライブパフォーマンスに取り組む予定である。これは、メイドカフェにおける親密な空間についての考察を深める上で有効であると考えている。アキバブロードウェイのショーのように、スクリーンを含んだパフォーマンスとし、より長尺で精緻な映像作品へと発展させることも考えている。

オープン・スタジオの様子
銀、レース布、鉄、スクリーン、リボン、ポラロイド

オープン・スタジオの様子
本、参考資料

《International first-gen death screen Tamagotchi》
銀、布、レース

オープン・スタジオの様子

オープン・スタジオでのトークの様子