三野 新

レジデンス・プログラム

二都市間交流事業プログラム(派遣)

更新日:2025.9.9

三野 新

参加プログラム 二都市間交流事業プログラム(派遣)
活動拠点東京、神奈川
滞在都市/滞在先ソウル/SeMAナンジ・レジデンシー
滞在期間2025年3月 - 2025年5月
滞在目的

龍山(ヨンサン)米軍基地跡は、かつて日本軍基地を米軍が接収したもので、2024年現在その稼働を終え、ソウル市民に解放されつつある。しかし、米軍返還時に回復されるべき汚染地は未処理のまま「宙吊り」の状態にある。これは米韓SOFA(在韓米軍地位協定)に基づく政治的問題であり、国家による土地と人間の歴史的帰属を象徴するものでもある。同時に、自由であるはずの私たちの身体が、主権国家に所属する限り「宙吊り」の土地を快適な居場所とすることが可能なのかを問われているようでもある。日本で取り組んだテーマを基に、類似の地位協定を持つソウルで制作することで、基地と戦争に関する芸術的アプローチを多角的に展開する。

滞在中の活動
  • 1ヶ月目:龍山(ヨンサン)米軍基地跡やその周辺でリサーチを行いながら、物語のありかを探る。同時に、基地で実際に働いていた人や周辺住民へのインタビューも行いたい。
  • 2ヶ月目:戯曲の制作を行いつつ、それを元にして地元のアーティストやパフォーマーとの協働ワークショップを行いたい。
  • 3ヶ月目:スタジオ・ビジットもしくはギャラリー等のスペースを使っての仮設的な成果発表を行いたい。具体的には、リサーチを元にした仮設的な「上演」を行う予定。
  • ソウルにいるInterdisciplinary Artistたちとの交流や共同制作に関する可能性を開いていく。
滞在中に行ったリサーチ及び制作活動

当初は龍山の米軍基地に関する歴史と現在を比較文化的に捉える調査を進めていたが、ある展覧会の準備中、参加作家の壁画が無断で除去されるという出来事に立ち会い、外部からの来訪者としての距離感と、現場に居合わせたことで否応なく巻き込まれる当事者性のあいだで揺れる中、自身の位置づけや関わり方を問い直す
経験となった。都市の「壁」、歴史の「層」、関係性の「情/정」を軸に、植民地主義や軍事化、アート実践に潜む構造を横断的に見つめ、
現地でのフィールドワーク、写真、戯曲的想像と他者との対話を通して、複雑な声が交錯する地点を探った。

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オープンスタジオ展示風景、2025年、インスタレーション、ミ クストメディア(写真、養生テー プ、 チ ョ コ パ イ、 D M Z の 鉄 条 網) 

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オープンスタジオ展示風景、2025年、インスタレーション、ミ クストメディア(写真、養生テー プ、 チ ョ コ パ イ、 D M Z の 鉄 条 網) 

滞在の成果

滞在成果の最大の収穫は、日本と韓国の歴史的・地理的な連続性を肌で実感できたことだ。歴史的な場所や慰霊碑のみならず日常的な風景の中で得た物質の手触りが、抽象概念として自分の物語に結びついた。また、同世代のアーティストやインディペンデント・キュレーターとの交流が強い化学反応を生み、今後の協働プロジェクトへと発展している。オープンスタジオでは、黄色い養生テープで仮留めした写真と更新型QRテキストによる可変展示を試作し、制作プロセスを開いたまま提示した。ここでは壁画抹消事件への介入とその反省も記録として織り込み、構造的暴力に対する自分自身の当事者性のあり方についてを展示に内在するように考えた。
反省点としては、特定の場所に長くコミットして制作を深める時間が不足したことだが、築いた人的ネットワークにより今後の長期滞在が可能になった。
経験は自作だけでなく日本近現代史の再考にも影響し、今後の(東アジアを中心とした)各地の「壁と情」を横断的に巡る記録・戯曲化する次プロジェクトへ
向かっていく手応えを感じた。

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オープンスタジオ展示風景、2025年、インスタレーション、ミ クストメディア(写真、養生テー プ、 チ ョ コ パ イ、 D M Z の 鉄 条 網) 

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オープンスタジオ展示風景、2025年、インスタレーション、ミ クストメディア(写真、養生テー プ、 チ ョ コ パ イ、 D M Z の 鉄 条 網) 

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オープンスタジオ展示風景、2025年、インスタレーション、ミ クストメディア(写真、養生テー プ、 チ ョ コ パ イ、 D M Z の 鉄 条 網)
写真:Sustain Works (提供:Nanji Residency,Seoul Museum Art)

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リサーチの様子

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リサーチの様子

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