更新日:2025.4.7
| 参加プログラム | キュレーター招聘プログラム |
|---|---|
| 活動拠点 | ソウル |
| 滞在都市/滞在先 | 東京 |
| 滞在期間 | 2025年5月 - 2025年7月 |
私の現在のキュレーション活動は、現代アジアにおけるソーシャリー・エンゲイジド・アートが、文脈に応じたアプローチをとおして、いかに対話と帰属意識を育むかを探究している。TOKASのレジデンス期間中、日本の社会的、地域的に根ざしたアート・プロジェクトをリサーチし、日常生活や文化的記憶との関係に焦点を当てる。このリサーチは、移り変わるグローバルな文脈の中で、アジアの現代アートの再文脈化に貢献することを目的としている。
TOKASでのレジデンス期間中、日本における社会的関与型アート(SEA)を調査した。コミュニティに根ざしたプロジェクトや社会問題に取り組むアーティストの実践に焦点を当て、とくに場所性や美的再構成のあり方に注目した。東京、瀬戸内の島々、埼玉、横浜、石巻を訪れ、アーティストのスタジオやコミュニティスペース、記念碑的な場所、展覧会を巡った。これらの出会いを通じて、アートが地域や社会の課題にどのように関わり、公の対話の可能性を開き、展覧会という形態をとるのかを学んだ。 アーティスト、キュレーター、研究者との対話やインタビューを通じて、彼らの実践がどのように周縁化された記憶や歴史、コミュニティに関わっているかの洞察を得た。資料を収集し、日本の現代美術に対する理解を深め、ネットワークを構築した。何より、このレジデンスは、社会的関与型アートをアジアの文脈で捉え直す契機となり、自身の社会的関与型アートに関するキュレーターとしての問いを深化させる機会となった。
京島のピンポンプラッツ

石巻・オープンスタジオにて、志賀理江子との面会
直島・瀬戸内アーカイブにて、下道基行との面会
「SAY YES」展示風景、瀬島
このレジデンスを通じて、日本における社会的関与型アートの批評的な可能性を探り、それをより広いアジアの文脈の中で再考した。社会的関与型アートを参加や倫理という馴染み深い枠組みだけで捉えるのではなく、特定の場所やコミュニティの中で抑圧された記憶を再構築する状況的な実践として理解するようになった。 この視点から、社会的関与型アートが支配的な物語に介入し、記憶と権力の関係を再構築するために用いる三つの繰り返し現れる戦略を特定した。それは、空間化された記憶、時間の断絶、そしてパフォーマティブな再記述である。 これらの洞察は、今後の展覧会や執筆の基盤となり、次回のディスカッション・サークルで共有し、実践者同士の対話を促進する予定である。今後は、日本の他地域やアジアの他の地域へと研究を拡大し、より批判的に状況に根ざしたキュレーションの実践を深めていく計画である。

石巻・門脇小学校跡地

木賃文化

オープンスタジオでのインスタレーション風景
写真:間庭裕基

オープンスタジオでのトークの様子