更新日:2025.4.17
| 参加プログラム | 海外クリエーター招聘プログラム(テーマ・プロジェクト) |
|---|---|
| 活動拠点 | レメソス(キプロス) |
| 滞在都市/滞在先 | 東京 |
| 滞在期間 | 2025年5月 - 2025年7月 |
TOKASでの滞在期間中、アヒレオスは地域社会と関わりながら、AIの未来をローカルな視点から探求する。キプロス(世界的なAI競争の周縁にある島)から東京(ハリウッドのテクノ・オリエンタリズムの物語にしばしば登場する都市)に焦点を移し、この滞在をとおして、ハイテク企業が描くAIと人類の未来像とは対照的な、地域社会の現実を検証する。参加型のアーティスト・ゲームやワークショップを通して、地元コミュニティと関わり、地域レベルでのAIの影響を探る。その目的は、対話、コラボレーション、そして私たちが共有する未来についての批判的な検証を促進することである。
レジデンス期間中、私はAIや未来に関してテック業界のリーダーたちが共有している想像力についてリサーチを行い、それが日本ではどのように異なるのか、比較しながら考察した。専門家へのインタビューや現地訪問、学術研究やメディア報道の分析を通じて調査を進めた。特に注目したのは、シリコンバレーから日本に至るまで、テックリーダーたちが現在優先している、ある物語についてである。すなわち、AGI(汎用人工知能)という、人間と同等もしくはそれ以上の知性を持つとされる超知能AIの「実現」をめぐる国際競争である。しかし実際には、こうした物語は植民地主義的な思考に基づいており、既存の権力の非対称性をさらに強化している。このリサーチをもとに、私はプレーヤーたちが協働で物語を創り出すカードゲームを制作した。このゲームは、AI産業が共有するトップダウン的なイマジナリーに疑問を投げかけるものであり、プレイヤー同士が協力してAIと未来についての民話的な物語を創作することを目的とし、企業中心の語りが溢れる現在の世界において、多様な視点に光を与えることを目指している。このゲームを、東京と北海道のさまざまなグループとともにプレイした。そこでは、テクノロジーや未来に対する人々の多様な感情や考え方に触れることができ、日本におけるこうしたテーマへの向き合い方の幅広さを実感した。

北海道でのプレイテスト
レジデンスを通して、日本におけるAIと未来に関するイマジナリーについての理解を深めることができた。また、自身のリサーチを新たな文化的・地理的文脈の中で見直し、応用する貴重な機会にもなった。 さまざまなグループと関わりながら、一緒にゲームをプレイし、テクノロジーの未来について語り合う中で、地域に根ざした新たな視点が生まれた。プレイを通じて共同で創作された物語は、今後、参加型アート作品へと発展する予定である。それは、テクノロジーの代替的な未来像を描く民話を集めた、オンライン上のアンソロジーとして公開することを目指している。 今後はこのゲームを他の地域でも展開し、地域ごとの物語の違いや、ローカルな想像力がどのように表れるかを比較していきたいと考えている。

オープン・スタジオでのゲームセッションの様子
写真:間庭裕基

オープン・スタジオの様子

オープン・スタジオでのゲームセッション
写真:間庭裕基

オープン・スタジオでのプレイを通じて創られた物語
写真:間庭裕基