絡まりのプロトコル

TOKAS Project
本郷

絡まりのプロトコル

TOKAS Project Vol. 8

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他者や環境との絡まりのなかで生成され変容し続ける私たちの存在

TOKAS Projectは、国際的な交流を促進し、多文化的な視点でアートや社会など多様なテーマについて思考するプログラムです。8回目となる本展では、トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)とスイス・バーゼルのアトリエ・モンディアルとの交流15周年を記念して、過去にレジデンス・プログラムに参加したアーティストのなかから、知覚や存在の輪郭の揺らぎへの問いと応答をテーマに、モニカ・ステューダー/クリストフ・ヴァン・デン・ベルク、中島りか、レオナルド・ビュルギ・テノリオの3組を紹介します。

人間は、自然や動物、機械などといった、人間以外のものと明確に境界を引く存在であるという考えが主流とされていましたが、近年その輪郭の揺らぎが注目されています。私たちのまわりには目に見えない微生物や菌が蠢き、身体のみならず、社会生活に大きな影響を与えています。また、知覚は人工知能やアルゴリズムと連携して未踏の領域を捉え、さらには、死や幻覚というものでさえも、私たちの意識に経験の更新をもたらす媒介となっています。

参加アーティストはそれぞれ、デジタル・メディアを通じた意識、人間の手が及ばない自然界に存在する菌やその発酵による生命の循環、死に対する儀礼といった異なるテーマから、私たちの知覚や存在の輪郭がどのように揺れ動くのかを、視覚・聴覚・身体感覚を介して表現しています。それらの作品は、単に人間を超えることを目指すのではなく、人間であり続けることの不確かさと豊かさに目を向けさせます。

本展では、「人間であること」がひとつの固定された状態ではなく、周りの環境を含めたより広範な社会と絡まり合いながら、生成され変容し続けるプロセスとして捉え直すことを試みます。

開催概要

     
タイトルTOKAS Project Vol. 8「絡まりのプロトコル」
会期
2025年8月23日(土)- 2025年9月28日(日)
時間
11:00-19:00(入場は閉館30分前まで)
休館日月曜日(9月15日は開館)、9月16日
会場
トーキョーアーツアンドスペース本郷
入場料
無料
アーティストモニカ・ステューダー/クリストフ・ヴァン・デン・ベルク
中島りか
レオナルド・ビュルギ・テノリオ
主催トーキョーアーツアンドスペース(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館)
後援在日スイス大使館

参加アーティスト

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《FOWDIB AI Core: HALLUC》 2023
VRインスタレーション内でリアルタイム生成  

モニカ・ステューダー/クリストフ・ヴァン・デン・ベルク|Monica STUDER/Christoph van den BERG

モニカ・ステューダーとクリストフ・ヴァン・デン・ベルクは、1990年代より、コンピューター・グラフィクスとプログラミングを 用いて仮想環境と現実環境を往来する作品を制作しています。彼らが見せる強烈な色鮮やかさで彩られたバーチャル空間は、あくまで虚構世界として存在していますが、現実との類似性を仄かに匂わせるよう意図されて制作されています。本展では、機械は意識をもてるのか、そして自らの意思で発達できるのか、という問いについて、とある架空の研究施設の歴史と発見になぞらえたVR作品をはじめとするマルチメディア・インスタレーションで展開します。

[プロフィール]
モニカ・ステューダー:1960年チューリッヒ生まれ。 クリストフ・ヴァン・デン・ベルグ:1962年バーゼル生まれ。ともにバーゼルを拠点に活動。1991年より協働で活動を開始し、1996年よりインターネット上でのプロジェクトを始動。2022年よりKKiÖR(チューリッヒ)メンバー。ルツェルン応用科学芸術大学教授(クリティカル・メディア・イメージ)。2023年カッセル芸術大学客員教授(ニューメディア)。主な展覧会に「Collection 24 - Swiss Art from the 18th century to thepresent」(Aargauer Kunsthaus、アーラウ、スイス)など、ヨーロッパを中心に世界各地で展覧会、プロジェクト等を行っている。
2013年度二国間交流プログラムでトーキョーワンダーサイト青山に滞在。  

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《塔のセラピー》2021 「I tower over my dead body.」より
撮影:竹久直樹

中島りか|NAKASHIMA Rika

中島りかは、近代の理性主義や資本主義にもとづいた「公」と「私」を分ける感覚に疑問をもち、都市の中でそのふたつの間にある曖昧な「境界(閾=いき)」の表現を目指しています。そうした問題意識のもと、スイスで合法とされている安楽死をテーマに現地でリサーチを進めました。
リサーチをとおして中島は、自己決定権の価値が確立されたスイスや西洋における安楽死の議論には、伝統的キリスト教や第二次世界大戦のナチズムの歴史と、加速する個人主義の間における矛盾があることに気付きました。また、現地では実際に安楽死で亡くなった人物の家族へのインタビューをきっかけに、その人物がたしなんでいた「アレクサンダーテクニーク」や埋葬方法に選んだ「自然葬」にも関心を広げています。
これらの考察をもとに、中島は「個人と社会」、そして「自然」とのつながりに焦点を当てたサウンド・インスタレーション作品を発表します。

[プロフィール]
1995年愛知県生まれ。東京都、愛知県を拠点に活動。2023年東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科リサーチ領域修了。プロジェクトスペース「脱衣所-(a) place to be naked」を2022年始動、以後運営メンバー。主な展覧会に「INTERSTICE」(le ventre、ヘーゲンハイム、フランス、2024)、「□より外」(TALION GALLERY、東京、2023)、「I tower over my dead body.」(Gallery 10 [TOH]、東京、2021)など。
2024年度二都市間交流プログラムでアトリエ・モンディアルに滞在。

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《Living things》 2023 
ブナ、オークだぼ、菌糸体(ヒラタケ、青ヒラタケ)、粘土、 小石、天然鉱物顔料(アンバー)

レオナルド・ビュルギ・テノリオ|Leonardo BÜRGI TENORIO

自然環境における文化と自然の現代的な定義づけを主題に制作に取り組むレオナルドは、近年、特に菌糸の役割に注目し、生物の生長と腐敗のプロセスを、多様な手法を用いて表現してきました。日本での滞在中には、日本の食を担う麹と発酵文化についてリサーチを重ねました。そこから、麹菌の一種であるニホンコウジカビに視点をうつし、稲との密接な関係を探究します。伝統的な稲の乾燥方法である稲架掛けから着想した立体作品や、木彫ドローイングで、菌類と環境、景観、文化的慣習との絡まりを視覚化しようと試みます。

[プロフィール]
1994年バーゼル・シュタット生まれ。バーゼルを拠点に活動。2023年北西スイス応用科学芸術大学バーゼルインスティチュート・アート・ジェンダー・ ネイチャー修了(美術)。バーゼルの展示スペースAusstellungsraumKlingental の運営メンバー。主な展覧会に「Safe Room」( 台北当代芸術館、2025)、「Living Things」(Art in Architecture、Kunstkredit Basel-Stadt、2023)など。
2023年度二国間交流プログラムでTOKASレジデンシーに滞在。

アトリエ・モンディアルについて

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1986年にクリストフ・メリアン財団によって設立され(※)、2014年新たなアートの拠点として注目されるドライシュピッツァレアル地区へ移転。海外アーティストのための7つのスタジオ兼住居と、スイス人アーティストのための17のスタジオ、広い展示スペースがあります。同じ建物内には、メディア・アートセンター、写真スタジオ、ギャラリーなどが入居し、敷地内には美術大学もあります。

※設立当初の名称はIAAB(“Internationales Atelier- und Austauschprogramm der Region Basel”)で、2014年から現在の名称として活動しています。

関連イベント

アーティスト・トーク
日時2025年8月23日(土)16:00-17:30
出演モニカ・ステューダー/クリストフ・ヴァン・デン・ベルク、中島りか、レオナルド・ビュルギ・テノリオ
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金無料
言語日英逐次通訳

※日程および参加アーティストは変更となる場合があります。
※手話通訳をご希望の方は、「8/23トークの手話通訳希望」と件名に記載のうえ、8月8日(金)までにメールでご連絡ください。
E-mail: public_program[at]tokyoartsandspace.jp [at]を@に変えてください。


参加クリエーター

クリストフ・バン・デン・ベルク
レオナルド・ビュルギ・テノリオ
中島りか
モニカ・ステューダー

施設紹介
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