メイ・リウ「Homesick for Another World: a film unfolding in space」

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本郷

メイ・リウ「Homesick for Another World: a film unfolding in space」

OPEN SITE 10|公募プログラム【パフォーマンス部門】

さまざまな社会、時代、政治的闘争の間を行き来しながら、過去と現在と未来が重なり合う学際的なマルチメディア・パフォーマンス。ドキュメンタリー映像、オーラル・ヒストリー、夢、推理小説、個人的な考察を織り交ぜ、予想外のストーリーテリング・パフォーマンスを組み立てる。普遍的な意識や記憶、テクノロジーの現在につながりを見出し、抑圧された状況で見る夢というテーマを、ユーモアと洞察力をもって探求する。

日時 
2025年11月7日(金)19:00- 
2025年11月8日(土)14:30- ★アフタートーク|モデレーター:李 芸濃(研究者)(日英逐次通訳付き)    
2025年11月9日(日)15:00-
料金
2,500円
- 予約制、自由席 
- 9月12日(金)14:00より予約開始
- 各公演とも定員になり次第、または前日17時までに予約受付を終了します。
会場トーキョーアーツアンドスペース本郷 スペースC(3F) 
脚本、出演メイ・リウ、マラズ・ウスタ
協力志賀理江子(Forecast メンターシップ)、Amarte Fonds、Electric Shadows studio
制作協力メイ・シンイー
チケット情報2025年11月7日(金)19:00-  *予約受付を終了しました。会場にて開演1時間前より若干枚当日券を販売します。※現金精算のみ
2025年11月8日(土)14:30-  *予約受付を終了しました。会場にて開演1時間前より若干枚当日券を販売します。※現金精算のみ 
2025年11月9日(日)15:00-  *予約受付を終了しました。会場にて開演1時間前より若干枚当日券を販売します。※現金精算のみ 


9月12日(金)14:00より販売開始(外部サイトに遷移します)
※Peatixのアカウント登録とログインが必要です。

*本企画のリサーチは、オランダ映画アカデミーの「MA Artistic Research in and through Cinema」プログラムの枠組みの中で発展しました。

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《Homesick for Another World》 2024

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《Homesick for Another World》 2024

《Homesick for Another World》2025
Photo:Yutaro Yamaguchi ©︎Theater Commons Tokyo’25

《Homesick for Another World》2025
Forecast Festival 2025 © Camille Blake

《Homesick for Another World》2025
Forecast Festival 2025 © Camille Blake

プロフィール

上海生まれ。アムステルダムを拠点に活動。ドキュメンタリーやフィクション映画制作の経験を活かしてパフォーマンス作品を制作する。映画の定義を拡張するほか、パフォーマンス制作をとおして自分自身や世界に対する精神的洞察を得るため「フィルムヨガ」を行う。主な活動に「Homesick for Another World」(シアターコモンズ’25、東京、Forecast Festival、ベルリン、2025)など。

https://meiliulc.com/

レビュー

夢への旅

畠中 実(OPEN SITE 10 審査員)

 「別世界への郷愁」と題されたレクチャー・パフォーマンスは、中国上海生まれのメイ・リウとシリア生まれのマラズ・ウスタによる、リサーチにもとづく長期間のプロジェクトである。昨年、ドイツのアーティスト育成プログラム「フォーキャスト・プラットフォーム」に選出されたリウが、志賀理江子をメンターとして作られたレクチャー・パフォーマンスを原型としている。それは、作家の(それは私たちの、でもありうる)生きる現実から、いかにして逃れることが可能かを試行する映画的パフォーマンスである。また、そのためのもうひとつの現実を生きる手段としての夢を、現実の境界を超えてユートピアに近づくための手段として考察したものでもある。作品の形態は、上映だけではなく、インスタレーションやワークショップや出版など、その都度、異なる形態でのプレゼンテーションが行なわれているが、今回のTOKASの公演では、レクチャー・パフォーマンスの上演という形態で、レクチャーやインタビュー映像を交えながら、ドキュメンタリーとフィクションの領域をあいまいにしながら、私たちの世界というものがいかに改変可能かを説くものであった。
 作品は新型コロナウイルスの感染拡大(パンデミック)による外出禁止令(ロックダウン)に端を発する。上海でロックダウンに見舞われたリウは、母親の助けにより、ひとり隔離の区域から脱出する。家族を残したままにその状況から離脱したリウは、自分が元の場所にとどまり続けていたかもしれない可能性によって二重化する。もうひとつの世界に生きることになったリウは、中国に残された人たち、友人や家族にインタビューを行ない、隔離された状況をどう生きているのか、それをどのように乗り越えているのか、リサーチを行なった。この作品は、そうしたオーラルヒストリーとして収集された隔離中の体験を起点に、隔離された、あるいは政治的に抑圧された現実からの離脱を試みる。そうして作品は、リウの身に起きた出来事から、隔離された人々の証言をつうじて、抑圧された現実に直面する人々の物語へとゆるやかに拡がっていく。
 抵抗の手段として彼らが発見したのは夢を見ること。閉じ込められた空間から脱出することを可能にする夢の世界への脱走は、個人のそれぞれの物語からその起源となる歴史を垣間見せる。それはまた、隔離中の自身の解放への願望を表象したものにほかならない。そうしたもうひとつの世界を生きることで希望をつないでいく人々の隔離下における夢が、まさに現実になっていく。リウは、「夢の中で経験することは現実の体験であると信じる」ようになったという。それは現実における抑圧に抵抗する手段として、明晰夢(夢を見ている最中にそれが夢であることを自覚できる状態)を見ることによってもたらされた。中国における外出禁止令中の、閉ざされ、どこへも行けない、そうした心理状況からの脱出を試みるものだった。
 ウスタはシリアという独裁政権が50年続いていた国で生活していたが、2011年に興った内戦から、2024年にはついに独裁者は逃亡、翌年には暫定政府が発足したことで、待ち続けていた自由を獲得し、希望がわいたという。しかし、そこでも未来の計画が不完全なままそれが実現されたことで、国内での差別や諍いは絶えなかったという。リウはトークにおいて、明晰夢というのは主体性を持って決定できることの比喩であるという。シリアの解放後、その主体がどのように行動するのか。各自が理想とするような状況を持っていたとしても、それがひとつにならなければ、さらなる問題がひきおこされる。それは、この作品のもうひとつの問題意識へとつながった。個々人の夢や理想をおなじくする世界というのはありえるのか、ということ。しかし、それはけしてニヒリズムではなく、どのように(理想的に)民主主義を実現するかという、終わらない問いでもあるのかもしれない。
 いくつかの演出上の手法について、ミャンマーの活動家のプライバシーを守るために映像がネガになっている箇所がある。リウは、夢の世界というのはもしかしたらそのように見えているのかもしれないと話しながら、ネガというのは現像されていない(プリントされていない、の意味だろう)現実というものなのではないかと話した。プリントされていない状態のフィルムは暗い箱に仕舞われ、可能性に満ちた状態で保管されているのだという。それこそが夢の非実現性(夢は実現すると夢ではなくなる)なのである。
 また、パフォーマンス中の演者自身をカメラで撮影したライヴ映像がスクリーンに投影されるシーンでは、やや視点の異なる、しかし等身大の映像が投影されることで現実が、異なる視点で二重化して見える。それによって、その時に語られる、夢の中の夢、のような状態を実際に感じることができる。そうした、映像に触れるというアイデアはジョーン・ジョナスのパフォーマンスを思わせるものでもある。トークでは、以前は自身の身長よりも大きなスクリーンを使って、等身大よりも大きな映像を投影していたが、それが政治的なプロパガンダと同じような効果を持つもののように感じられたため、今回はほぼ等身大の映像を投影することによって、より明晰夢を思わせる、現実にたいするレイヤーを持たせることが可能になったのだと語っていた。


畠中 実
キュレーター、美術・音楽批評。1968年生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]に開館準備より携わり、主任学芸員、学芸課長をへて2025年3月末で退任。近年のおもな展覧会に、「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」(2023)、「evala 現われる場 消滅する像」(2024)など。


参加クリエーター

メイ・リウ

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